障害福祉サービス事業におけるICT活用やDX推進にも業務継続計画(BCP)が必要な理由
前回の記事では、ICT活用とDX推進の重要性と効果についてお話しました
障害福祉サービスの現場では、これからも人材不足や業務の高度化・複雑化が大きな課題となります
その解決のため、ICT活用やDX推進が求められています
また、これから事業を開設する際は、それらを意識した準備が必要となります
さて、ICTやDXの基盤となるのがデジタル機器ですが、機能しなくなると何の役にも立たなくなります
さらに、デジタル機器で成り立っていた業務の全てが中断・停滞します
今回は、ICTの活用やDXの推進にも業務継続計画(BCP)が必要な理由について解説します
役立たずに備えるのが業務継続計画(BCP)の役目
デジタル機器は利便性が高い強力なツールですが、非常に脆弱な特性を持っています
災害などで停電が発生するとデジタル機器は使えません
故障やトラブルの発生、コンピューターウィルス感染やサイバー攻撃を受けた場合でも機能停止となります
日頃は便利なデジタル機器が、突然役立たずになり、“デジタル危機” へと変貌することがあります
そのような事態を想定し、対策を講じておくこともICT活用・DX推進の一つの施策です
そこで必要になるのが、業務継続計画(BCP)です。
BCPでは、機能が停止すると困るデジタル機器を対象に、事前対策や備蓄、事態発生時の対処をあらかじめ取り決めておきます
特に、デジタル機器に頼っていた重要業務の対策として、人力・手動で行う手順なども取り決めておきます
デジタル危機に対処するためのBCPの考え方
デジタル機器が機能停止になると、次のような事象が発生します
- 電話やインターネットが使えず、連絡や情報の発信・入手ができない
- データで管理していた各種記録などの入力・変更・閲覧ができない
- センサーやカメラなどが使えず、状況掌握ができない
その結果として、重要業務が中断・停滞します
- 職員間の情報共有や連絡ができない
- 利用者に対するサービスの提供ができない
- サービス提供記録や報酬請求業務が停滞する
- 個別支援計画や業務日誌などのデータ確認ができない
- 状況確認で移動するため、人員と時間が余計にかかる
事業の種類や提供するサービスによって、重要業務は異なりますが、大きな影響を受けることは間違いありません
また、ICTの導入やDXが進んでいない状態であっても、デジタル機器を活用していれば、必ず影響を受けます
そのような事象が発生する原因はいくつも考えられます
- 停電
- 故障やトラブル
- コンピュータウイルスやサイバー攻撃などのセキュリティ障害
さらに、それらの原因の引き金となる事態もいくつも考えられます
- 自然災害
- 事故
- 人為的ミス
- 故意による行為
- 器材の保守整備不良
- セキュリティ対策の未整備
事業を支える重要業務の中断・停滞は絶対に避けたいところです。そのためには、次のような態勢や活動が必要になります
- デジタル機器が停止しない対策
- 機能が停止した場合の早期復旧
- デジタル機器を使用しない代替手順の確立
- 以上の全てを職員等が理解し、実行できる
以上のようなことをあらかじめ予期し、対策や対処の方針や基準を取り決めておくのがBCP策定の目的です
また、事態発生の未然防止、BCPに基づく各種準備、事態対処の全てを職員等が行います
そのためには、研修や訓練によって知識能力を身につけさせておく必要があります
まとめ
障害福祉サービス事業におけるICT活用やDX推進は、業務の効率化と質の向上を図るために不可欠です
しかし、ICTなどの基盤となるデジタル機器に依存するリスクも考慮しなければなりません
業務継続計画(BCP)は、デジタル機器が停止した際の事業の中断を最小限に抑えるための重要な手段です
事前の対策と職員等の研修を通じて、事業の安定運営を確保することが求められます
これにより、利用者に対するサービスの質を維持し続けることができるのです