災害と社会福祉事業どうする
この記事を書いている時点で能登半島地震の発災から4ヵ月が経過しています
徐々に復旧・復興しているところもあれば、全く進んでいないところもあります
現代の災害対処は、過去の災害で得られた教訓を可能な限り活用しています
でも、災害はどれをとっても同じではありません
今回の能登半島地震も過去にない現象や被害が発生しています
少しは予期予測できたでしょうが、災害は人知の限界を簡単に超えてきます
また、民衆の力や行政の力でも太刀打ちできないこともあるでしょう
結果、人・地域・建物・交通・事業などの復旧・復興に違いが出てきます
公共的に最重要なモノ、容易に手が出せるモノから復旧・復興が始まります
物理的・地理的・法的に難しいモノは、後回しにせざるを得ません
そんな中、高齢者や障害者にかかわる復旧・復興の状況はどうなっているのでしょう
社会福祉で見る被災の現状
5月8日に厚労省が公表した資料(ココ)によれば、現在進行形の被害は以下のとおりです
● 高齢者関連施設
・施設被害:273件(最大時307件)
・断水:70件(最大時161件)
●障害者関連施設
・施設被害:44件(最大時48件)
・断水:28件(最大時30件)
注目は、まだまだ復旧できていない状態が継続していることが読み取れます
数字の大きさではなく、被害を受けている最大時の件数と現在の件数の比率です
社会福祉は医療などとともに、人の生命に直接関係のある制度・事業です
そんな社会的に重要なものが、なぜか復旧・復興が進んでいないという感じがします
ちなみに、医療施設の状況ですが・・・
・施設被害:0件(最大時26件)
・断水:0件(最大時23件)
そもそも被害が小さかったとか、復旧が容易だったからの理由で、今は復旧しているのかもしれません
このような状況は、能登半島地震で被災した一般世帯や他業種にもいえると思います
現在はどうしているのか
発災直後に開設するはずだった福祉避難所は思いのほか体制が整いませんでした
※内閣府防災情報資料(ココ)より
6市町に71カ所が開設されるはずのところ、1月8日時点で10カ所、4月1日時点で27カ所
福祉避難所が頼りにできない高齢者や障害者などの要配慮者は、他の手段を選ぶしかなかったでしょう
・指定避難所に一時的に逃げる
・生き残っている同業者施設のお世話になる
・被災地から出て、他の地域に移動する
また、被災した介護事業者や障害福祉事業者も利用者の保護・生活のための手を打ったことでしょう
・被害を受けた箇所の応急修復
・給水支援などの活用
・利用者に対するサービス提供の早期再開
・施設が使用不可のため、利用者の収容や支援を他の施設等に依頼
などなど
発災から4ヶ月が経過した現在も復旧と復興に向けた活動を続けられています
また、他の施設等から受け入れた利用者に対してもサービスの提供を続けていることでしょう
ところが、被災から復旧して業務を再開しても事業経営上の困難に面している事業者がいます
その理由は、利用者が戻ってこないのです
利用者側に、その後の事情や生活態様に変化があったためです
被災地から出て、他の地域で生活を立て直したなどで戻ってこないのです
ご存じのとおり、利用者さんが存在して、サービスの提供実績がなければ、報酬が得られません
サービス提供の環境が整ったとしても、利用者の不在が続けば事業経営が危うくなります
元々の利用者やその親族等に説明しつつ、新たな利用者の獲得も考える事業者さんもいます
でも、まだ被災からの復旧・復興がまだまだの地域では、新たな利用者の獲得は難しいようです
今後が大変になる
現在進行形で被災から立ち上がった・立ち上げている事業者には、自助努力だけでは足りないのが現実です
また、国の政策や自治体の支援頼みでは、時間的に間に合わず、十分な支援等が期待できないこともあり得ます
それを考えると、自助・共助・公助という防災3助以外の "第4の社会システム" が必要かもしれません
それは、物やお金という面だけでなく、”人が安心・納得・期待できる社会福祉” とするためのシステムです
今の利用者が頼れる・戻ってくる、新たな利用者も頼ってくるような社会福祉が理想です
(そんな理想を、事業者の頑張りだけでは実現できないでしょうね~)
さて、被災していない事業者や遠方で何ら影響を受けていない事業者は、今後が大変になります
何が大変かというと・・・
”いずれは我が身、その時に対する備えや構えをどうする”
その背景には・・・
”あり得ない・・・と思っていたことが現実に起こった”
"もしかすると・・・と思っていたいことが目の前にある”
・・・ということです
今回の地震で被災した事業者さんが防災や事業継続の整備を怠っていたとは思えません
それでも多大な被害を受け、事業経営が苦境に立っている現実があります
単純に ”逃げる・支援を受ける" だけでは全く足りないことが今回の地震で明確になりました
また、いざとなっても、国や自治体が全てを満足するような施策を行えないことも分かりました
そうなると、今の事業者さんは、あり得ない事態にも備えて、構えをとらざるを得ません
それは、自然災害だけでなく、事故や事件、利用者側の事情や社会の流れの変化も考える必要があります
”あり得ない・もしかすると” が現実に起こったのですから
・今回の能登半島地震から得られる情報を、どのように捉えるのか
・あり得ない事態も想定した備えと構えの整えをどう考えるのか
・どこまで何をすべきなのか、又は何もしないのか
現在は平時・平常にある事業者さんは、そんな今だからこそ、今後のことに思いを巡らせていただきたいと思います