白書に見た障害福祉事業がやるべき施策
中小企業庁が5月10日に中小企業白書・小規模企業白書を公表しました
これは、昨年度の事業者の動向と今年度の国の施策が取りまとめられた文書です
中小企業・小規模企業という単位でザックリとまとめられていますが、世の中の流れや課題が読み取れる内容となっています
参考リンク:経済産業省HPより
白書の中に ”中小企業・小規模事業者が直面する課題と今後の展望” と言う内容があります
それらは、企業が直面している課題と政府が推進している課題に関して説明されています
- 人手不足対応と持続的な賃上げ
- 生産性向上に向けた省力化投資
- 付加価値の向上と取引適正化・価格転嫁
- 良質な雇用の創出と働き方改革
- GX(グリーン・トランスフォーメーション)
- サーキュラーエコノミー(循環経済)
- DX(デジタル・トランスフォーメーション)
これらの課題は、障害福祉事業が抱える課題としても当てはまると思います
そんな課題の中から、いくつかピックアップしてお話したいと思います
人手不足と持続的な賃上げ
どこの分野も人が足りていません
原因はご存じのとおり、就業人口が少ないからです
また、劇的な改善も期待できそうにありません
- 少子高齢化に歯止めがかかっていない
- 業務の省力化・省人化が進んでいない
- 賃金や働く環境が十分に整っていない
この状況は、障害福祉事業でも同じだろうと思いいます
加えて、障害福祉事業は、他の業種に比べて、事業の運営・経営に自由度がありません
事業の運営は、色々と基準が法令等で定まっています
収益は、サービス提供に応じた報酬が主体となっています
障害者等に対する福祉に携わる人材が少ないほか、専門資格を持つ人も多くはいませんので、どうしても人手不足となります
- 人を増やしたいけど、人材がいない
- 人が増えないと、加算請求ができない
- 人が増えないと、サービスの質を維持・向上できない
こんな弊害の連鎖が現実にあると思います
また、今いる人が離職しないような施策も必要でしょう
- 賃金の引き上げ
- 勤務時間の改善
- 物的環境や人間関係などの職場環境の改善
中でも、賃金の引き上げは重要な施策です
白書によると、人手が不足していない企業のその要因のトップは、賃金や賞与の引き上げでダントツです
でも、障害福祉事業の報酬単価は決まっています
また、請求できる加算項目も多くはありません
事業収入がほとんど固定されて自助努力だけでは収益増は期待できません
その上に昨今の物価高は、経費負担が増大しています
そんな中での賃金引き上げは、ち密な経営戦略と大変な覚悟が必要でしょう
だから、得られる加算は請求し、法人税の控除などの手続きを積極的に行う必要があります
生産性向上に向けた省力化投資とDX
この課題は、製造業だけの話ではありません
障害福祉事業においては、利用者に対するサービスの提供というのが、生産活動に該当し、生産性とは、提供するサービスの質に当たります
サービスの質を低下させず、逆に向上させるように努めるのが事業者の使命です
そのためには、相当の時間と労力、気遣いが必要です
でも、利用者ニーズの変化や法令等の改正などに対応するため、日頃の業務が複雑多岐となりがちです
その結果として人手不足となっているのが現状でしょう
そこで、政府は、省力化のための設備投資(業務の機械化など)を推奨しています
また、既存の業務処理をデジタル化するDXによる省力化・省人化・生産性の向上を強く推奨しています
障害福祉事業も、これらの省力化投資とDXの推進が求められています
現に、利用者に対する介助や支援に機械やデジタル技術を取り入れる余地があります
ただ、ヒト対ヒトの対応でなければならない業務があります
障害福祉事業には、このヒト対ヒトの対応を必要とすることが多いかと思います
そのため、業務の機械化やデジタル化がなかなか進まないという傾向にあります
でも、人手が足りないならば、業務の整理・コンパクト化とともに、機械化やデジタル化も進めるべきでしょう
少しずつでも良いので、できることからコツコツ行うことが大切かと思います
この際、従業者からの意見や要望をよく聴いて、反映することが大切です
設備投資とDX化は、従業者の働き方や職場環境の改善にもつながっています
働きがいのある職場があれば、離職者の発生も防ぐことができるでしょう
理想は「三方良し」
近江商人の経営理念に「三方良し」というものがあります
商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそ、良い商売といえるという理念です
この理念は、正に障害福祉事業に必要な考え方です
利用者と事業者が共に満足でき、安心・安定して暮らせることこそが、社会貢献でもあります
現在の中小企業・小規模企業が抱える課題は、障害福祉事業にも言えることです
確かに、課題解決のためのアプローチは、他業種・他業界とは異なります
でも、異なるからと言って、何も考えない・何もしないという選択はありません
漫才の西川きよし ではないですが・・・ “できることからコツコツと” 課題に取り組みことが、現代の近江商人の姿だと思います
こんなことを今回の中小企業白書・小規模企業白書を読んでいて考えていました