障害福祉にICTの活用は必須でしょう

5月15日付の中日新聞に興味深い記事がありました

能登半島地震の被災地にある福祉施設に派遣された介護職員や災害派遣福祉チーム(DWAT)の隊員らの活動報告会が14日に行われ、活動を行ったDWAT隊員から、今後求められる災害対策などについての意見が述べられました

意見の中で、被災地では施設の職員不足が深刻であるため、ICT(情報通信技術)を活用した施設利用者の情報共有や事前の備蓄品の準備が必要であると強調されました

令和6年5月15日付の中日新

今年度の障害福祉サービス事業の報酬改定に併せて示された横断的な改定事項にもICTの活用が示されています

日頃の業務上の負担を軽減して、提供するサービスの質の向上のために活用が期待されているわけです
その結果は、サービス利用者の生活や社会交流をより良くなることにつながります

今般の能登半島地震では、障害福祉の分野にも多くの影響を及ぼし、多くの教訓を得ることができています
ICTの活用は、日頃の業務だけでなく、災害の現場においても期待されていることが改めて知らされました

"障害福祉にICTの活用が必須である"

このことについて考えたいと思います

現代の有り様

組織化された行政や会社、学校や家庭において大切なことがあります

・必要な情報が共有されていること
・意思疎通のためのコミュニケーションが良好であること

人が二人以上いる場合は、この2つのことは必然のことです

でも、何かに心が奪われていたり、相手が嫌な人だったりすると、これらは疎かになりがちです
また、「言わなくても分かるだろう」なんて一方通行的 な考えにもなることでしょう

2つの大切なことが疎かになると、信用・信頼を失うことになります
また、組織的な活動や助け合い、相手を思いやる気持ちがなくなります

障害福祉の現場では、信用と信頼なくして福祉は成り立ちません
お互いを尊重し、敬う心がなければ、福祉は成り立ちません

どんな時代でも、どんなに科学が発達しても、このことが変わることはありません

でも、現代の世の中は、情報量が極めて多く、伝達速度も超高速です
情報や意思を伝達するツールも多岐にわたります

それなのになぜか、情報は共有されず、意思が伝わらないことが多くあります
その原因は、いくつもあります

  • 必要な情報は "自然に入る" から "自分で取りに行く" に変化した
  • 処理・整理ができないほどに情報量が多すぎて取捨選択できない
  • 自分の興味のある情報しか入手しない
  • いくつもある手段やツールの使い分けできない・限定してしまっている
  • 情報を送ったタイミングと受け取ったタイミングに時間差がある

多くの場合、情報を共有しようとし、意思の疎通を図ろうとしています
でも、頑張っても共有できず、相手に伝わらないということは起きます
その結果、他の手を使おうとしますが、相手がそれに追随できていないという現象が起きます

口頭がダメなら、メモ書きで
でも、メモ書きを見てなかったりする

電話がダメならメールで
でも、メール確認が遅くなって、事に間に合わなかったりする

メールでは遅くなるので、LINEで
でも、相手はLINEの使い方に慣れていなかったりする

「何をやっても伝わらないのは、アイツが悪いからだ!」

結局、誰が・何が悪いのかが分からないまま、人間関係が崩壊することがあります
現代の情報共有と意思疎通のあり方は、今一度、考え直す必要があるかと思います

有るのだから、使おうよ

先ほどのDWAT隊員の意見に、福祉の現場にICTの活用を進めてほしい旨がありました
DWAT隊員としては、現場のニーズに応える活動をしたいのですが、必要な情報やニーズが伝わらないと動けません

ところが、被災下の業務に忙しい職員等は、DWAT隊員に対応できる状況にはありません
DWATと合流できない、全てを伝える手段と時間がない、忙しすぎて気が回らないという具合です
こんな状況では、情報共有・意思疎通を望んでも無理なことでしょう

そこで出てくるのが、情報通信技術を大いに活用しましょう!という考えです
お互いにとって必要な情報やニーズを、一定の場所に保存しておけば、いつでも誰でも確認できます
お互いがその場にいなくても情報の共有と意思の疎通が図れるのです

それに使われるツールが多くあるのだから、積極的に使いましょう!ってことになります

障害福祉の現場にICTを活用する意義は、業務負担の軽減などだけでなく、非常時の支援を円滑にすることもあります
そういう観点で考えれば、日頃の業務に必要を感じていなくても、災害などの非常時の備えとして導入しておくべきでしょう

使えるようにしとく

今はICTを必要としない状況でも、万が一のこと、将来のことを考えて導入すべきです

ですが・・・

闇雲に導入しても、使える状態になければ、無駄になるだけです
また、ICTはネットワークを基盤としたシステムですので、月々の通信経費がかかります
せっかくあるのだから、使える状態にしておき、使えるなら使うようにすべきでしょう

使えるようにしておくとは、次のような状態をいいます

  • 器材等が正常に稼働する状態にあり、そのためのメンテナンスも行う
  • 職員等が、器材の操作に慣れており、簡易なトラブルも解消できる
  • 器材・システムを業務で使う手順などが策定され、マニュアル化されている
  • 関係のある行政機関、医療機関、他事業所、利用者やその保護者などとシステムを介して情報の授受ができる
  • 情報を欠損や漏洩から保護できている
  • 停電や器材故障に対して予備の電源や器材が備蓄されている

それなりのコスト、労力、気配りを必要としますが、ICTを活用する効果を考えれば、費用対効果はあると思います
そんためにも、使えるモノは使えるようにしておくことが重要です

最低限必要なコトは取り決めておく

先ほどの "手順などが策定され、マニュアル化されている" は、ICTに限ったことではありません
日頃の業務もそうですし、災害や事故などが発生した際の対処についても同様です

それが故に、各種の計画やマニュア、指針など整備が強く推奨され、一部は義務となっています

  • 運営規程
  • 業務処理手順や業務マニュアル
  • 防火計画
  • 災害対策計画
  • 業務継続計画(BCP)
  • 感染症対策の指針やマニュアル
  • 安全計画や事故等対処マニュアル
  • 虐待防止や身体拘束の適正化に関する指針 などなど

これらは、日頃の業務の処理や対応を標準化することで、安定したサービスの提供を確保します
また、事態等発生を防止するために行う事項を定め、確実な実行を促します
更に、事態等が発生して混乱する中でも的確な対応がとれるような行動基準を定めおきします

これらは、最低限必要な事項を必ず示さなければなりません
また、誰もが確認できるように書面化又はデータ化しておきます

更に、手順書、マニュアル、計画書などの存在とその内容について、全職員等に対して周知します
なお、一部のものについては、訓練を行って、いつでも行動に移せる態勢をつくります

ICTもこれらと同じ考え方での活用しなければなりません

今後のこと

今は、日頃の業務にICTの活用が推奨されています
でも、サービス利用者の生活をより良くするために、今後はICTの活用が強く求められるこたが考えられます

また、災害時の対処でもICTが有効に活用できることから、一定のシステムの導入が義務化されるかもしれません
今は過渡期にあるマイナンバーカードのように・・・

そんなことを考えてみると、今から障害福祉事業を開設する方々は、当初からICTシステムを導入しておくべきでしょう

最後に、障害福祉の現場にICTを導入して活用するための参考記事を以下にアップしていますので、興味のある方は一読してみてください
参考記事「障害福祉サービス事業におけるICTの活用とは」(リンク