障害福祉サービス事業運営に必要な指針・計画・マニュアルの整備とその重要性

前回の記事では、障害福祉サービス事業の運営規程について解説しました

ひな形に頼り切ってはダメ:運営規程の策定の3つのポイント

運営規程とは、障害福祉サービス事業の運営に必要な基本事項を定めた規範です。しかし、記載内容が職場や実務の実態と異なることで形だけの書類となることがあります。今…


今回は、運営規程とともに、具体的に整備しなければならない指針、計画、マニュアルについて解説します
これらの書類は、事業の運営において不可欠なものであり、法令で定められている場合もあります
適切に整備されていないと、運営指導時に問題となることがありますので、その重要性を理解し、しっかりと準備することが求められます

備えておくべき指針・計画・マニュアル

以下に、法令等で備え付けが定められている、もしくは運営指導において確認される指針・計画・マニュアルを列挙します
これらの書類は、事業運営の基盤となるものであり、整備が求められるものです
【 】内は根拠法令です。

  • 個別支援計画              【厚令171第3条】      
  • 緊急時対応マニュアル          【厚令171第28条他】
  • 運営規程                【厚令171第31条他】
  • ハラスメント防止マニュアル       【厚令171第33条他】
  • 業務継続計画(BCP)          【厚令171第33条の2他】
  • 感染症の予防及びまん延の防止のための指針【厚令171第34条他】
  • 身体拘束等の適正化のための指針     【厚令171第35条の2他】
  • 苦情対応マニュアル           【厚令171第39条他】
  • 事故対応マニュアル           【厚令171第40条他】
  • 虐待防止のための指針          【厚令171第40条の2他】
  • 非常災害対策計画            【厚令171第70条他】
  • 消防計画                【自令6第3条】
  • 安全計画                【厚令15第40条の2他】

また、法令等で定めはないものの、業務手順の標準化や安全対策として備えておくべきものもあります。

  • 衛生管理マニュアル           【厚令171第34条他】
  • 個人情報取扱マニュアル         【厚令171第36条他】
  • 防犯対策マニュアル           【厚令15第40条の2他】
  • 職員倫理綱領・行動指針         【厚令171第3条】

※根拠法令

  • 厚令171平成18年厚生労働省令第171号
    障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準
  • 厚令15:平成24年厚生労働省令第15号
    児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準
  • 自令15:昭和36年自治省令第6号
    消防法施行規則

指針・計画・マニュアルの違いと使い分け

指針・計画・マニュアルは、それぞれ異なる目的と役割を持っています
以下にその違いと使い分けについて解説します

  • 指針
    事前対策や事後対応の方向性や着意事項など、基本的な方針を示したものです
    基本的な方針を示すものであり、具体的な手順までは示されません
    そのため、現場での対応には不十分です
  • マニュアル
    手順書や手引書とも言い、現場での作業手順などを体系的に示したものです
    具体的な手順を示すため、現場での実務に直結します     
  • 計画
    状況や条件に応じて行動・活動するための判断基準や手順をあらかじめ決めて示したものです
    指針とマニュアルの中間に位置し、行動基準や手順を含むものです

例えば、「感染症の予防及びまん延の防止のための指針」は、感染の予防などに関する基本方針を示すものです
その具体的な手順は「衛生管理マニュアル」や「感染対策マニュアル」で示すことになります
また、「業務継続計画(BCP)」は、事業の継続に関する判断・行動の基準や手順を示す計画書であり、その冒頭で指針を示す構成となります

なお、法令等で「指針」や「計画」を指定して作成・策定を定めているものがありますので、条文を注意深く確認することが必要です

事業の開設時から必要となる指針・計画・マニュアル

事業を新規に開設する場合、指定申請の書類作成と並行して、指針・計画・マニュアルを策定・作成しなければなりません
これらの書類がないと、職員や従業員は業務を遂行できません

特に新規開設時は、全員が現場実務の初心者であるため、頼りにするのは指針・計画・マニュアルです
これらの書類は、職員が業務を正確かつ安全に遂行するためのガイドラインとなります

加えて、新規開設から概ね1年以内に運営指導を受けることがあります
その際、未策定・未整備であると、報酬が減算されることがあります
例えば、業務継続計画や身体拘束等の適正化のための指針が未策定の場合、報酬減算の対象となります

最初(初版)の指針・計画・マニュアルは、現場実務の実態と異なることがあります
定期的または必要に応じて見直し修正を行うことで、実務に即した内容にすることが重要です
これらの書類は、一度作ったら終わりではなく、常に見直し修正して育てるものと考えましょう

まとめ

障害福祉サービス事業の運営には、適切な指針・計画・マニュアルの整備が不可欠です
これらの書類は、事業の運営を支える基盤であり、法令で定められたものも多く含まれます
適切に整備されていないと、運営指導時に問題となることがあるため、事前にしっかりと準備することが重要です

指針は基本的な方針を示し、計画は行動基準や手順を示し、マニュアルは具体的な手順を示します
それぞれの書類は異なる目的と役割を持つため、適切に使い分けることが求められます

新規開設時には、指針・計画・マニュアルの整備が特に重要です
これらの書類がないと職員は業務を遂行できず、運営指導時に報酬減算のリスクもあります
定期的な見直し修正を行い、常に実務に即した内容にすることが必要です

障害福祉サービス事業の運営を円滑に進めるために、指針・計画・マニュアルの整備を怠らず、常に最新の内容に保つよう心がけましょう